塗装用刷毛の種類と選び方
執筆:「ひょうたんラボ」運営スタッフ(株タイホウ)
塗装用の刷毛を選ぶ際、適切な刷毛を選ぶことは、塗膜の品質や仕上がりにとってとても重要です。刷毛には多くの種類やサイズがあり、選択に迷うこともあるかもしれません。この記事では、塗膜の品質や仕上りが最善になるよう、刷毛の種類や特徴、また用途ごとの刷毛の選び方について紹介します。
塗装用刷毛の種類
ペルーの来航以降、塗料と塗装法が海外からもたらされました。当時の刷毛は寸胴刷毛、平刷毛、ダスター刷毛のような刷毛でしたが日本的な創意工夫を加えて筋違刷毛が誕生しました。
用途に合わせて目地刷毛も誕生しました。
明治期には造船や洋風住宅、汽車の車両の全体的の塗装に使用されておりました。
刷毛には用途にあわあせて実に多くの種類があります。
各メーカー様によって分け方の違いはありますが、タイホウでは刷毛の種類を以下のように区分しています。
- 鉄骨用刷毛
- 水性塗料用
- ダメ込み用刷毛
- 合成樹脂用刷毛
- ラック・ニス用刷毛
- スミ切り用刷毛
- 竹刷毛
- 特殊刷毛
- メジ用刷毛
- ダスター刷毛
- 万能刷毛/ホーム刷毛
- 筆
- その他
刷毛の種類にはそれぞれの特徴があり、その特徴ごとの使い分けが仕上がりに大きく影響していきますので、刷毛選びの参考にご活用ください。
鉄骨用刷毛
主に橋梁や大きな鉄部を塗装する用の刷毛です。
耐溶剤性に優れ十分な膜厚を確保できます。作業性にも優れます。
【鉄骨用おすすめ刷毛】
水性塗料用刷毛
主にナイロンを使用した刷毛です。ナイロンは毛が硬化しにくく耐久性に優れます。
【水性塗料おすすめ刷毛】
タイホウの水性塗料用刷毛は刷毛目が出にくいと好評をいただいております。
ダメ込み用刷毛
出隅・入隅に使用される刷毛で、毛のまとまりが重要視されます。
タイホウのダメ込み刷毛は、見切り性に優れます。
【ダメ込み用おすすめ刷毛】
合成樹脂用刷毛
弱溶剤塗料用の刷毛です。
山羊の髭や尾の腰の強い部分の毛が使用されています。
【合成樹脂用おすすめ刷毛】
- はるか
- しろわし >
ラック・ニス用刷毛
刷毛目がでにくく、作業性に優れるクリア・ニス用の刷毛です。
山羊の柔らかい部分の毛が使用されています。
【ラック・ニス用おすすめ刷毛】
スミ切り用刷毛
いわゆる小刷毛(こばけ)と言われる刷毛です。
隅切りなどの細かい箇所に使用されます。
【スミ切り用おすすめ刷毛】
弱溶剤
- 生駒 >
- 小梅
水性用
竹刷毛
柄が竹製の刷毛です。柄の形が細く直線的な小刷毛です。
柄の乾燥性に優れます。
【おすすめ竹刷毛】
特殊刷毛
カシュ―刷毛や薬品刷毛等を指します。
【おすすめ特殊刷毛】
メジ用刷毛
目地に使用される薄口の刷毛です。
タイホウには多くのラインナップがあります。
【おすすめメジ用刷毛】
ダスター刷毛
掃除用途、微弾性塗料塗布用途に使用される刷毛です。
【おすすめダスター刷毛】
万能刷毛/ホーム刷毛
家庭用(DIY用)に開発された刷毛です。
使いやすさと多用途感を求めたエコノミータイプの刷毛です。
【推奨】
筆
看板用の筆
【推奨】
- 平画筆
- ポスター筆
柄の種類
それぞれ用途と使いやすさで分けられています。
柄の種類は大きく分けて以下のように分類されます。
- 筋違(すじかい)刷毛
- 平刷毛(ベタ刷毛)
- 寸筒(ずんどう)刷毛
- 金巻(かなまき)刷毛
- カットイン
筋違刷毛とは
明治以降に発達した日本独特の刷毛です。
毛と柄が直線的ではなく、柄に角度が付いてます。
日本人の手の大きさ、特長に考慮して発達した刷毛で、現在の主流の刷毛です。
平刷毛(ベタ刷毛)とは
戦前は、壁塗りに使いましたが現在は屋根塗装に使用されます。
海外のダスター刷毛を参考に、柄の部分を日本独特の1枚板を割りは止めでとめた刷毛です。
大きな面積を塗装するのに適している大判の刷毛です。
寸筒刷毛とは
明治以降に発達した日本独特の大型の刷毛です。戦前は壁、橋梁、鉄骨に使用されました。
粘膜性に優れた刷毛で、東京タワー竣工時にも使用されました。
現在は、現場で使用されることはほとんどなくなり伝統工芸品となっております。
一部の県では塗装技能士試験の試験科目に課しております。
金巻刷毛とは
日本独特の筋違刷毛と欧米のダスター刷毛両方の要素を持った刷毛です。
それぞれの刷毛のハーフ&ハーフと言えます。腰の強い毛質に特徴があります。
カットインとは
出隅・入隅の細かな作業に合わせて、作業しやすいように毛をナナメカットした刷毛のことです。
毛の種類
- 化繊
- 山羊毛
- 馬毛
- 豚毛
化繊
いわゆるナイロン刷毛に使用される素材です。
ナイロンと言ってますが正確にはPA(ナイロン/ポリアミド)含む、PBT(ポリブチルテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)という化繊を使用しています。
PBTは歯ブラシに使用される化繊で、先付け加工(先端を先細り加工すること) ができ、耐摩耗性に優れます。以上から刷毛用途に向いている化繊です。
山羊毛
和洋中を問わず、太古から塗り用途に使用されてきた天然素材です。
身体の部位によって様々な特徴があり、それぞれを組み合わせることにより多くの種類の刷毛を作ることができます。最高級部位はヤンス(髭)です。
馬毛
戦前は関東刷毛の主な材料でした。非常に耐久性に優れ、水性塗料・溶剤塗料に順応します。
戦後は価格が高価になったこと、使い出しに難しさがあることから、山羊毛が主流となりました。
現在一部の高級刷毛に馬毛が使われています。また弱溶剤用途に使用されます。
豚毛
耐水性、耐摩耗性に優れた毛質です。微弾性塗料やダスター刷毛に使用されます。
白毛種、黒毛種の豚種があり白毛種は毛質が柔らかく、黒毛種は毛質が硬いといった特徴があります。中国種、英国種の豚の毛が刷毛の原料になります。
塗料で選ぶ
刷毛選びの際にとても重要になるのが、使用する塗料によって選ぶという点です。
一般的に流通している塗料は以下の種類があります。
- 水性塗料
- 弱溶剤塗料
- ニス・クリヤ
- 微弾性塗料
- 自然塗料
水性塗料
水性塗料にはナイロン刷毛が使用されます。
山羊毛等の動物毛の刷毛は、水性塗料には使用できません。
動物毛の刷毛は水性塗料ではすぐに毛が硬化します。
弱溶剤塗料
山羊毛や馬毛等の動物毛の刷毛を使用します。
ナイロン刷毛は弱溶剤塗料には不向きで、毛がすぐに軟化してしまいます。
ニス・クリヤ
山羊毛の刷毛や豚毛の白毛の刷毛を使用します。
それらの刷毛は毛質の柔らかい部分を使用した刷毛です。
微弾性塗料
ダスター刷毛や豚毛の刷毛を主に使用します。粘度の高い塗料のため毛の太い腰のある豚毛の刷毛を使用します。
自然塗料
粘度の高い塗料のため豚毛の腰の強い刷毛を使用します。
黒毛の豚毛が向いています。
ナイロンと豚毛の混合刷毛は腰が弱くあまり向いていません。
まとめ
塗装用の刷毛は、それぞれの特徴を理解して最適な刷毛を選ぶことが、仕上がりを大きく作用してきます。
まずは、ご使用になる塗料(水性塗料か弱溶剤塗料か)、塗り所(外壁・内壁か木部か鉄部か) から選択いただき、経験とともにご自身の塗装作業にあった最適な刷毛をお選びください。